水中メランコリー
第1章
−暗闇のワルツ
誰か羽をもいでくれ。
誰か足を縛ってくれ。
誰か身体を引き裂いてくれ。
そうしないと僕は、また。
「有人!有人!来てみろよ!」
「ヒロト、年上を呼び捨てにしたら父さんが怒るぞ」
「そんなのいいからっ!窓の外見ろってば!」
すげーすげー、と歓喜の声を上げながら、ヒロトが窓の外を指す。
有人と呼ばれた少年は読み掛けの本を栞と一緒に閉じて、ゆっくりとした動作でヒロトの隣に並んだ。
「………」
「今日晴れてたからさー、見えると思ったんだよな」
見上げた空には修正液をぶちまけたかのような沢山の星が輝いていた。
窓越しに見ているからか、ガラスが部屋の光を反射してしっかり見ることが出来ない。
有人は無意識に窓を開けていた。
「…………さむっ」
「あっ、す、すまない。よく見えなくて」