ボクがキミのおとうさん。
その日ボクは、いつもの様に会社へと向かう準備をしていた。


朝ごはんを食べ、着替えを済ませると突然お腹の辺りが痛みだしたんだ。


その痛みが凄く強くなり、ボクは病院に運ばれたんだ。


血を抜いたり、大きな機械に入ったり。検査が終わって、それからしばらくして結果が出た。


相当悪くなってたんだね。身体のいろんな所に悪い物が出来てたみたいだ。


先生はボクにハッキリこう言ったよ。


「もう長くは生きられません。もって半年です」


ってね。


お母さんは泣き崩れたよ。でもボクは死ぬのなんか全然怖くなかったんだ。


キミとお母さんには、たくさんたくさん幸せな気持ちをもらったからね。


それよりも嫌だったのは、キミの成長を見れない事と、ボクがキミの父親だという証拠がなくなってしまう事だった。


キミと血の繋がりがないボクだから、ボクの生きる姿を見せる事で父親になろうとしてたのに、それすら長くはできない。


だからボクは、この手紙を残して、キミが生きていくための"みちしるべ"になろうと思ったんだ。


そう強く思ったせいか、ボクは診断結果が出てから、もう七ヶ月も生きてる。


もしかして、ボクはこのまま病気に勝っちゃうのかも知れないな。お母さんもそう言ってるよ。


キミの成長も楽しみだし、少しでも長く生きなきゃね。


でも、もしボクが病気に負けてしまったら。この手紙を読んで思い出して欲しいんだ。


何かにつまずいて、くじけそうな時には、ボクたち二人で込めた、キミの名前の強い意味を。


そして、誰がなんと言おうと


"ボクがキミのおとうさん"だと言う事を。


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