少年天使〜エンゼル・フェザー〜

『どちら様でしょうか?』

優しい声に恵ちゃんが応えます。

「私たち野村くんと同じクラスの者なんですが、今日は野村くんにプリントを届けに来ました」


『あら、まぁ、そうなの。今開けるわね』

そうお母さんが言ってから少しすると、玄関からカチャッという音がしました。

『どうぞ、お入りください』

「はい。お邪魔します」

恵ちゃんがインターホンに向かってそう言って玄関を開けました。


綺麗なフローリングに、沢山の靴が入るだろう立派な靴箱。

靴箱の上にはアンティークの手紙入れと、家族で何処か旅行へ行った時の写真が大事そうに飾られていました。

「いらっしゃい。こんにちは」

パタパタと足音がしてお母さんが玄関までやってきました。

背が小さくて細い可愛らしいお母さんです。

「こんにちは」

「こんにちは」

僕達は元気よく挨拶をします。

「わざわざ、ありがとうね。一真も呼んでみるわね。一真ぁ?一真?」

お母さんが階段に向かって呼びます。

返事はありません。

「もう、仕方ないわねぇ」
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