少年天使〜エンゼル・フェザー〜
次の日の朝。
恵ちゃんは何時もとは違う茶色のメガネをかけていました。
「おはよう恵ちゃん」
「……新田くん、おはよう」
恵ちゃんは何だかいつもと雰囲気が違います。
「……えっと、何かな?」
僕がそんな恵ちゃんを見つめていると、恵ちゃんは少し困った様な顔をしました。
僕はポケットからそれを取り出します。
「はい、これ」
黒ぶちのメガネ。
「……あ、私の。昨日何処かで無くしてしまったの、何で新田くんが?」
恵ちゃんは僕からメガネを受け取ると、いとおしそうにメガネ拭きでレンズを綺麗にしました。
さっき恵ちゃんはメガネを無くしてしまったと言いました。
でも時折メガネをかける人でなく、普段からメガネをかけ続けている人が無くすことなんてあるのでしょうか?
「恵ちゃん昨日凄く慌てておばあさんのお店から出て来たよね。何があったの?」
僕の言葉に恵ちゃんはビクッと肩を揺らしました。
「……えっ、何のことかな?分かんないよ私」
恵ちゃんは唇が震えて、目が泳いでいます。
「おい、恵。ちょっと顔貸せよ」
その時、教室の入り口から礼雄くんが恵ちゃんを呼びました。
「ご、ごめんね新田くん。じゃあ」
何だか落ち着かない様子のままで恵ちゃんは教室を出ていきました。