少年天使〜エンゼル・フェザー〜


えっ――?

盗み?

今確かに礼雄くんがそう言ったよね?

「またあの婆さんの店だな?目も見えてねぇ年寄りの店で何してんだお前!」

礼雄くんが手を離すと、恵ちゃんはそのまま床に座り込んでしまいました。

「……してない、もん。万引きなんか、あたししてないもん」

ぼれぼろと涙を零していく恵ちゃん。

礼雄くんは睨み付けたまま言います。

「そうかよ……今度はいったい誰にその罪を擦り付けんのかね。なぁ?」

ガチガチと歯が揺れ、恵ちゃんは身体を小刻みに揺らしました。

「ごめ、ごめんなさい。私は、私は……」

「オレに謝って何が解決すんだ!お前を庇って警察に行った過去は消えやしねぇ。誰に謝るべきか分かんねぇわけじゃねぇだろ!?」

礼雄くんは恵ちゃんを怒鳴りつけると階段を登って行きました。

これから授業始まるんだけどな……

1人にされた恵ちゃんは「ごめんなさい」と何度も言いながら涙を流していました。

僕は恵ちゃんの肩にそっと触れます。

「恵ちゃん、今日一緒におばあさんのお店行こう?」

キラキラと輝いた瞳に僕は笑いかけました。

恵ちゃんは何度も何度も頷いてくれました。





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