少年天使〜エンゼル・フェザー〜
帰り道に恵ちゃんは重たい口を開いてくれました。
「私は幼稚園の頃に両親が離婚して父親に引き取られたの。」
恵ちゃんの目は赤く腫れあがっていました。
「2人で生活をし始めてすぐに、仕事のストレスからかお酒を飲んで暴れる様になって……見兼ねたお爺ちゃんとお婆ちゃんが私を引き取ってくれた」
僕はただ相づちだけを打って恵ちゃんの話を聞きます。
「お爺ちゃんもお婆ちゃんも凄く優しくて、私によくしてくれて。少ない年金と貯金を切り崩して私を育ててくれたわ」
道の反対を歩く家族を見て、恵ちゃんが悲しそうに笑いました。
「小学校高学年になった頃には貯金は尽きてしまって、大事にしていた家具が一つずつ無くなっていったわ。家具が全てなくなると、段々日用品も揃わなくなってきてしまって」
恵ちゃんの目にはまた涙が一杯に溜まっていました。
それが零れない様に少し上を向いたけど、瞬きと一緒に涙が零れ落ちました。
「それで、あのおばあさんのお店から商品を盗ってしまったんだね?」
恵ちゃんは袖で頬をぬぐって、鼻をすすりながら頷きました。