少年天使〜エンゼル・フェザー〜
ドアを開くとおばあさんの優しい声が僕達を迎えてくれました。
「いらっしゃい」
商品棚を抜けて、おばあさんの座っている前まで行きます。
「……あ、あの」
震える声。
おばあさんはその声を聞いて優しく微笑みます。
「あら篠原さんちの恵ちゃんね。今日もお使いに来てくれたのね、偉いわねぇ」
恵ちゃんは首を振りました。
そしておばあさんの前で頭を下げます。
「おばあさんごめんなさい。このお店の商品を盗んだの私なんです!」
おばあさんは少し驚いた様な顔をして、でもまた優しく微笑みます。
「二年前に男の子が万引きをして警察の人と一緒に来たのも、本当は彼が私を庇ってくれたからで。今回だって、私はおばあちゃんの目が悪いのを知ってて、こんな……こんなこと」
恵ちゃんは必死に頭を下げ続けます。
「……ヤエちゃんと寅吉さんはお元気?」
「あ、はい。お買い物は私がしてますけど、お婆ちゃんもお爺ちゃんも元気です」
おばあさんはゆっくりと腰を上げると、店の奥に行ってしまいました。
僕と恵は目を見合わせます。