合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
玄関のベルが鳴った。

ここはオートロック仕様のマンションだから、外からの来客には、インターフォンが鳴る。

それがないってことは、マンション内に住む住人の来訪ということだ。

つまりは、階下に住む我が弟、樹。

なんでも、今受け持ってる現場が、このマンションの近くだろそうで、昼休みや、職人さんの出入りの途切れた空き時間、ひょっこり顔を出す。

また、暇に飽かせて姪っ子の顔でも見にきたんだろう……

「悪い、雅樹出てくれる?」

あたしは授乳を終え、満足気な裕樹の顔を見ながら身支度を整える。

やっぱ、弟と言えども、こんな姿を見せるのは気恥ずかしい。

「ほいよ」

程なく、

「ヒャァ……」

玄関から、力無い悲鳴が聞こえてきた。
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