合縁奇縁～女は欲張りな生き物なのです

あたしは舞子の言葉に、さほど驚くことは無かった。

だって、樹が高校生の時、密かに舞子に恋心を抱いていたのをあたしは知っている。

ま、当然、まともに相手にはされなかったけどね。

当時大学生の舞子は、丁度お父様を病気で亡くしたばかりで、彼女の目は父親と同年代の男性に向いていた。

あまりにも急に亡くなった、優しかった父親の姿を、舞子は恋人の中に求めていたんだよね。

ファザコン、って、あたしがいくらなじっても、

「しょうがないじゃん。好きになっちゃうんだから……」

って悪びれなかった舞子。

当然、相手は妻子もちが普通で、舞子はいつも最後に泣かされた。

容姿端麗、才色兼備。

そんな舞子の唯一の弱点。

樹もそのことを知っている。