合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「いやね、エレベーターホールまで追いかけたら、舞子さん、上に上がったんで、多分姉貴んちへ行ったのかなって。大分、取り乱してたみただったから、暫く姉貴たちに任せたほうが落ち着くかと……」

「ま、ある意味それは正しい選択だったよ。でも、ずるい」

「ずるいって……だいたい、僕の方が不利なんですよ。
年下だし、それも親友の弟だし。収入だって、きっと舞子さんの方が多いし。僕は恋愛経験少ないし。
付き合いはしたけど、やっぱり物足りない、とか言って捨てられる可能性の方が大きいわけで……
それ位の援護射撃は期待してもいいでしょ」

「あんた、そんなこと考えてたんだ……だって、舞子」

舞子の顔がクスッと綻んだ。

「同じ恋愛なんてないよ。全部、それが始めての経験。そう考えないと、あたしなんか、潰れちゃう」

その時、奥の部屋から、

「フンギャ……」

と、裕樹の鳴き声が聞こえてきた。
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