合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「可笑しい? まぁ、可笑しいよな。俺だって、こんな自分、想像できなかった。
でも、育休取って、毎日子供に向き合うとさ、やっぱ違うよ。
そりゃ、赤ん坊の世話は大変だけど、代わりにわかったこともたくさんある。
何事も経験しないとな」

「そう、そう。ね?」

あたしは雅樹の側に寄り、腕に抱かれた裕樹の頭をそっと撫でた。

始めはどうなることかと思ったけど、この一週間、雅樹はほんと頑張った。

オシメの始末から、入浴介助、夜中の授乳を一回粉ミルクにして代わってくれたり。

あたしが疲れてイライラして、意味無く雅樹に当たったこともあったけど、そんな時も雅樹はサラリと受け流して裕樹にしっかり目を向けてくれていた。

嗚呼、あたし達、こうして親になっていくんだな。

そう思えたことが、一番嬉しい。

言葉もなく、見つめあうあたし達を、

「ハイハイ、お二人を見習いますよ」

って、樹がちょっと茶化して言った。

そして、そっと舞子の手を引き、部屋を出ていった。

樹、舞子、頑張れ!

あたしは、心の中で二人にエールを送る……
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