合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「裕子さん、ビックニュース!」

雅樹の帰宅と一緒に、我が家に遊びにきた白石が開口一番に叫んだ。

「裕子さんの職場復帰はベビーと一緒ですよ!」

「え? それってどういうこと?」

「社内に託児所が新設されることになったんです。場所は本社ビル最上階の社食フロア。室長は元総務の中重さん。保育担当は元企画室庶務の山口さん。裕子さんもよく知ってるでしょう?」

さらりと語られた内容に腰を抜かしそうになった。

「白石……あんたって……」

「いやぁ、俺も驚いてる。まさか、こんなトントン拍子に事が運ぶとはな。さすが白石というとこだ」

「あ、ハグしてもらえます?」

両手を広げて、白石があたしを招く。

「なに、馬鹿言ってんの?」

「だって、僕、裕子さんのために頑張ったんですよ」

「わかってる。ありがと。ほんと、ありがと……」

あたしは、半ば反泣き状態で、白石をハグしていた。

白石はあたしにハグされるがまま、じっとしていた。

雅樹の手前、抱き返すわけにもいかないもんね。

「や、役得だな、頑張った甲斐がありました……」

自分から言った割りには、固まって動かない白石。

なんだか、可愛い……

「ま、そうだな。それくらいの価値はある」

雅樹が渋い顔であたし達を見つめていた。

そんな記憶も、雅樹の育休のドタバタで吹き飛んだけど……



そして、あたしは、明日、裕樹と共に職場復帰する。
< 146 / 215 >

この作品をシェア

pagetop