合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
あたしは、また、半ば強引に車の中へと押し込められた。

観念してシートベルトを締める。

車は程なく、駐車場から滑るように走り出した。

暫く無言のまま車を走らせた後、とあるマンションのロータリーで白石は車を止めた。

「このマンションの六〇一号室です」

「え?」

「木村課長の今の自宅です。先月、家族を呼び寄せるって、寮を出てこのマンションに移ったんです。その直後ですよ、課長が離婚したのは。何かおかしいでしょ。先輩、行って、はっきりさせて来て下さい。ここ数週間、課長の様子もおかしいし。僕もどうにも気分が落ち着きません。ここまで聞いて、帰りますか? やっぱり僕にしときますか?」

そう言った白石の顔は、今にも泣き出しそうな情けない顔で、こんな顔をさせているのが自分だと思うと苦しくなった。

雅樹に会わなければ。

白石に背中を押されて、心を決めた。

「わかった。会ってくる」

「それでこそ、僕が好きになった柏木先輩です」

あたしは、白石の優しさに涙が出そうだった。
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