合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
「なんで来た」
ドアを開けての雅樹の一声。
「随分じゃない? 引越し祝いに来たっていうのに……」
あたしは玄関に立ちはだかる雅樹を押しのけ、部屋の中へ入ろうとして、その光景に息を呑んだ。
ところ狭しと積み上げられたダンボール。引きちぎられた紙片。散乱するコンビニの袋。
後ろから肩を掴まれた。
「帰れ」
「雅樹? どうしたの? 何があったの? 白石から聞いたよ。離婚したって」
「ちっ、余計なことを……」
「余計なことじゃない。白石はあたしの為に教えてくれた。何で黙ってたの? 何で?」
「お前には、もう関係ない。俺にはもう関わるな。帰れ」
「あたしは帰らない。雅樹がちゃんと話してくれるまで帰らない」
あたしは、身を屈め、膝をかかえて廊下にしゃがみ込んだ。
「裕子。勘弁してくれ。俺は今、一人で立ってるのがやっとなんだ。お前の気持ちを支えてやれる余裕も自信もない。俺は、そんなちっぽけな人間なんだ」
「雅樹?」
消え入るような微かな呻きが聞こえてきた。
見上げると、壁に突っ伏した雅樹の背中が泣いていた。
「それでも、話して欲しいよ……」
あたしは立ち上がり、その背中をそっと抱きしめた。
雅樹の小さな震えが、徐々に静まるのを感じながら……
ドアを開けての雅樹の一声。
「随分じゃない? 引越し祝いに来たっていうのに……」
あたしは玄関に立ちはだかる雅樹を押しのけ、部屋の中へ入ろうとして、その光景に息を呑んだ。
ところ狭しと積み上げられたダンボール。引きちぎられた紙片。散乱するコンビニの袋。
後ろから肩を掴まれた。
「帰れ」
「雅樹? どうしたの? 何があったの? 白石から聞いたよ。離婚したって」
「ちっ、余計なことを……」
「余計なことじゃない。白石はあたしの為に教えてくれた。何で黙ってたの? 何で?」
「お前には、もう関係ない。俺にはもう関わるな。帰れ」
「あたしは帰らない。雅樹がちゃんと話してくれるまで帰らない」
あたしは、身を屈め、膝をかかえて廊下にしゃがみ込んだ。
「裕子。勘弁してくれ。俺は今、一人で立ってるのがやっとなんだ。お前の気持ちを支えてやれる余裕も自信もない。俺は、そんなちっぽけな人間なんだ」
「雅樹?」
消え入るような微かな呻きが聞こえてきた。
見上げると、壁に突っ伏した雅樹の背中が泣いていた。
「それでも、話して欲しいよ……」
あたしは立ち上がり、その背中をそっと抱きしめた。
雅樹の小さな震えが、徐々に静まるのを感じながら……