合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
でも、あたし、晶子さんの気持ちもわかるよ。
どんな状況でも、子どもを守りたかったんだね、彼女は。
必死だったんだよ、きっと。
その執着があたしより、ほんの少し大きかった。それだけなんだ。
「俺は大切なものを何ひとつ守れなかった。十年前の晶子に、不妊治療は止めろ、お前がいればそれでいい、と何故一言いってやることができなかったのか。五年前のお前に、何故、晶子と別れると言い切ることができなかったのか」
「え?」
「俺が欲しかったのは、お前の愛と、お前と過ごす未来だったのに。晶子に子供が出来たから別れる、なんて詭弁でしかない。俺は怖かったんだ。ズルズルと答えを先延ばしにして、周りを不幸にしている自分が。妻子を捨てて自分だけが幸せになる。自分が悪者になることが怖かったんだ」
「雅樹……」
「すまん。裕子。俺はお前を傷つけた。解ってる。恨まれてたって仕方がない。ほんとうに、すまなかった……」
肩を縮めて震える雅樹を、あたしはただ抱きしめることしか出来なかった。
ましてや、あの時、あたしが雅樹の子を身ごもっていたなんて、口が裂けても言えないと思った。
どんな状況でも、子どもを守りたかったんだね、彼女は。
必死だったんだよ、きっと。
その執着があたしより、ほんの少し大きかった。それだけなんだ。
「俺は大切なものを何ひとつ守れなかった。十年前の晶子に、不妊治療は止めろ、お前がいればそれでいい、と何故一言いってやることができなかったのか。五年前のお前に、何故、晶子と別れると言い切ることができなかったのか」
「え?」
「俺が欲しかったのは、お前の愛と、お前と過ごす未来だったのに。晶子に子供が出来たから別れる、なんて詭弁でしかない。俺は怖かったんだ。ズルズルと答えを先延ばしにして、周りを不幸にしている自分が。妻子を捨てて自分だけが幸せになる。自分が悪者になることが怖かったんだ」
「雅樹……」
「すまん。裕子。俺はお前を傷つけた。解ってる。恨まれてたって仕方がない。ほんとうに、すまなかった……」
肩を縮めて震える雅樹を、あたしはただ抱きしめることしか出来なかった。
ましてや、あの時、あたしが雅樹の子を身ごもっていたなんて、口が裂けても言えないと思った。