合縁奇縁~女は欲張りな生き物なのです
でも、もう、全て過去のことだよ。

過去に囚われて身動きできないなんて、もう嫌。

「恨んでないって言ったら嘘になる。でもね、雅樹、あたしもう忘れちゃったよ。辛いことはみんな忘れちゃった。だから、雅樹も忘れなよ」

それから暫く、二人で抱き合って泣いた。


その手は、身体は、心は、

二人の絆を求めて必死にその切れた端を探そうともがいてはいたけれど、

絡まった糸はそう簡単には解れなくて……


その距離を少し縮めただけで、

また離れた。



「もう遅い。送ってくよ」



雅樹がそう言って立ち上がったのは、もう時計がとっくに次の日を告げたあとだった。

あたしは、静かにその後について立ち上がる。

二人の歩む道は、まだ平行線のままだった。
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