路地裏ヒーロー
私はさっさと里子がいる一番奥の席へと歩いていくと、そのさらに奥からケンさんが顔を出した。


この小さな喫茶店は、ケンさんと亜矢さんの夫婦でやってるお店。

常連も私たちぐらいで、お客もほとんどこない。


なのに今でも続けているのは、私たちのためなのかもしれない。






「詩織ちゃん、いらっしゃい。何にする?」


笑顔でそう話しかけてきたケンさん。


「いつもので」


…その会話は、いつも私とケンさんとの間で始めに交わされる会話。





< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop