金曜日の恋人
黒のセダン。


車体はピカピカに磨き上げられている。


助手席に座ると コロンの香りが漂った。


車の香水ではない。


明らかにカエデがつけているものだとわかる。



「どこに行こうか?」

「送ってくれるって…」

「せっかく二人きりになれたのにもったいないよ」


カエデの口元がわずかにゆるむ。

サングラスで表情が読みとれない。


とてつもなく 不安になった。


もう後戻りできない…。
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