金曜日の恋人
立ち聞きするつもりなんてなかった。


詰所に入ることは到底できずそのまま走り去った。


ショックだった。


朝倉サンに映る自分…そして部下たちに見透かされたことが…


私にはずっとコンプレックスがあった。


だから男の人と恋愛関係になったことなど一度もない。


初体験はおろかキスの味さえ知らなかった。


若いときはそれでいい。


でも さすがにこの年になるとまたそれがコンプレックスと化していく。


焦りもあった。


もう どうなってもいい…


そんな あきらめに似た捨て身の気持ちが 結果的にカエデを近づけた。


自分を大切にできるのは自分だけなのに…
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