金曜日の恋人
「じゃあご主人の様子を見に行きましょうか?」


カエデが 山下さんの手をとってどこかへ行こうとする。


「ちょっと!」

「少しそこまで」


呼び止めた私に目配せする。


そこまでって…


心配しながら一人デイルームで見守りを続けていると ようやく二人が戻ってきた。


山下さんは にこにこしてる。


カエデも笑ってる。


仲むつまじく手をつなぐ二人。



「どこ行ってたのよ?」

「外だよ。つくし見つけた」

「は?」

「春だね」


のんきにつぶやく。


でも山下さんは 家のことを忘れたかのように上機嫌だ。
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