フェイクハント
 典子は話し終え、俯き静かに泣いていた。

 涼はあまりにも衝撃的な内容に、視線をどこに向けていいか分からず、口をぱくぱくし、おろおろするだけだった。


「わ、私お茶でも淹れてくるわ。少し落ち着くと思うから」


 涼がそう云って立ち上がると、


「涼、キッチンの場所分らないでしょ。私が行くわ」


 典子は頬を涙で濡らしたまま、立ち上がると、応接間を出て行った。

 その間、涼は今聞いた話しを頭で整理し始めた。
 静夫が典子を殺そうとしていたなんて。理由は? 本当に静夫は浮気していたんだろうか? 相手は会社の誰かなの? 

 中学時代から何でも知っている友人だと思っていたのに……。

 看板が落ちてきた時に、典子が見た女の後姿って、浮気相手の女なのだろうか?
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