わたしと保健室と彼~4つのお題+α
1.ひとりきりの保健室
「~~…ぐすっ、」
既に授業が始まっている校舎内は静寂に包まれている。
せめて校庭くらいは賑わってくれていても、いいのに。
やけに響く自分の嗚咽と、泣きすぎでぼうっとした頭でボンヤリとそう思った。
誰もいない保健室。
鼻まで上げた毛布も仕切りのカーテンにも、隠れないあたしの泣き声。
むしろ真っ白なそれらは反響するように余計に際立たせる。
耳に響いた鼻をすする音が、更に涙を誘った。
悲しい?
ううん、違う。
悔しい。情けない。
あんな最低な男にウツツを抜かした自分が。
見抜けなかった自分が。
『私、彼と結婚するのよ。お腹には子供もいるわ』
勝ち誇ったような、女の顔。
『お前が一番だよ』
優しく微笑んでくれたのは、嘘だった。
順番をつけたのは、他にも相手がいたから。
しかも、一番なんかじゃなかったなんてね。
大バカだ。
あたし、本当にバカすぎる。
「~~っ、っく」
思い出したらまた泣けてきて、あたしは頭まで毛布を被った。
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