わたしと保健室と彼~4つのお題+α
4.保健室の窓から彼が、
――もう、ほんと最悪。
窓越しに微笑む霧島先生を、睨み付けた。
「どうしたんですか?珠洲白さん。具合でも…?」
悪いのかと言いたげに、窓を開けて小首を傾げた先生。
「……なんで今日はいつもと雰囲気違うんですか?」
「そうですか?」
唇を尖らせたあたしに、先生はそんなことないってニッコリ笑って見せる。
いつもは降ろして耳に掛けてる長めの前髪を、今日は後ろに撫で付けて。
深緑に光るフレームの眼鏡の奥の瞳が、艶めいている。
羽織った白衣の胸元から覗く、少し緩めたネクタイ。
いつもは中性的で綺麗なイメージの霧島先生が一変、男の人だ。
大人の。
かっこいい、とか思ってしまう。
しかもそれは、あたしだけじゃない。
噂を聞き付けた女子生徒が、今朝からひっきりなしに保健室を訪れていて、あたしの付け入る隙なんてない。
休み時間もお昼休みも、近づくことすら出来なかった。
だからこうして、クラスメイトに無理を言って掃除当番を変わってもらった。
校庭の花壇脇、つまりは保健室の真ん前。
おあつらえ向きに周りには誰もいなくて、実質二人きり。
なのに……
「お掃除ではないんですか?」
ホウキを持ったまま一向に掃く気配すらないあたしに、先生はクスクス笑った。