わたしと保健室と彼~4つのお題+α
☆秘密のおまけ
~ベッドの下に散らばった靴~
「――このまま、私のものになりますか…?」
不意に離れた唇。
濡れて熱を持ったあたしの唇を、先生は自身の綺麗な指先でそっと撫でた。
瞬間、体の奥から突き上げる、熱いもの。
蜜のようにトロリとしたそれが、全身を巡って熱に浮かされたように、何も考えられなくなる。
先生の白衣の胸元を、すがるように握った。
「……先生で、いっぱいにして…」
先生を見つめる自分の瞳が、涙で潤んでいるのが分かる。
恥ずかしさから?
…分からない。
どうしようもないもどかしさが、体の奥で燻っていて。
あたしを突き動かす。
「分かりました」
クスリと笑んだ先生は、ベッドから離れ保健室の戸へと歩いて行った。
カーテンの隙間から覗くと、札のような物を戸の外に掛けたのが見えた。
そして閉じた戸から、カチャリと施錠の音。
「せんせ…?」
「これで邪魔は入りません」
戻りながらそう言った先生の瞳は、眼鏡を取ったせいか、今までで一番艶めいて見えた。
その言葉の意味と相まって、更にあたしの鼓動は激しくなる。
自分の心臓の音を聞きながら、この眼は先生以外を見る事を知らないように、逸らす事が出来なかった。
先生が戸に掛けたのは不在を示すもので。
保健医不在時は保健室には鍵を掛ける決まりになっているのだとあたしが知るのは、後の話。