わたしと保健室と彼~4つのお題+α
(3)隣が気になって眠れない
先生の部屋の合鍵を渡されて、使うこと数回。
この高級マンションにも慣れた頃、あたしは見つけてしまった。
書斎に置かれていた、それを―――
「冴さん?どうかしましたか…?」
ソファの上で膝を抱えたまま、先生が帰ってきた事にも気づけなかった。
「あ、おかえりなさい。…ごめん、気づかなくて」
真っ直ぐ、顔が見れない。
聞いてしまえば、いい。
あれは何って。
たったそれだけの言葉が重すぎて、声にならない。
答えが怖い。
…あたしの、意気地無し。
「顔色があまりよくないですね」
俯いていた顔を覗き込むように、先生はあたしの前にしゃがみこんだ。
「…大丈夫だよ」
ぶつかりそうになった視線に、顔を背ける。
ソファに突いた先生の手が、膝の上で握ったあたしの拳をそっと包んだ。
「前にも言いましたが……貴女に何かあったら、私は耐えられません」
横になりましょう――、そう言って先生はあたしの手を引いて寝室のドアを開けた。