わたしと保健室と彼~4つのお題+α
そう言って、先生は着ている白衣のポケットから、手の平に何かを取り出した。
「これで冷やしなさい。せっかくのかわいい顔が台無しですよ」
「っ……!?」
セリフもさることながら、突然視界を覆ったものに、息を飲んだ。
「ひゃっ…」
「ポケットサイズのアイスノンですよ」
―――え?
手で確かめてからそれを浮かして、目でも確認する。
手の熱を奪う“食べられません”と書いた保冷剤。
驚いて、先生とそれを交互に見た。
「目、冷やして下さい」
微笑みながら、先生は自分の目を指差した。
「……あ…」
あたしの為…?
先生の笑顔と行為が、胸にくすぐったい。
「どうも…」
妙に照れ臭くて、隠すようにアイスノンで目を覆った。
冷たいはずなのに。
さっきとは違う熱を持った涙が目頭に込み上げる。
零れ落ちた一筋を掬う、男の人にしてはやけに艶やかな指先の感触。
「貴女は笑顔の方が似合いますよ?」