キライ
「とにかく!アイドルじゃあるまいし、毎日ああやって囲まれんのは俺も困ってんだよ。追い払うにはカノジョいるって言うしかないからな。お前ほど気が強かったら多少の事じゃへこまないし貸しもあるしちょうどいいんだよ」

どこまで自分勝手なの!?
こんな男を調子に乗らせてる女子も女子よ!
無関係な私が迷惑被るなんて。

「あんた、サイテー」

私の呟きを聞き逃さなかった大迫は、電話の向こうの表情が目に浮かぶ程の抑揚のない声で答えた。

「サイテーで結構。とにかく明日からはカノジョとして振る舞えよ」

「嫌いな人相手にそんな風に出来るはずないでしょ」

刺々しい私の口調もどこ吹く風で話を進める。

「手始めにそれっぽく名前で呼べ」

どこまで偉そうなんだか。
呆れて言葉も出ない。

「おい、聞いてんのか?」

「聞いてるよ。名前で呼べばいいんでしょ」

「明日からだからな。忘れんなよ」

大迫はそう一方的に告げて電話を切った。

何で昨日携帯を忘れたんだろ。

何で拾ったのが大迫だったんだろ。

悪夢だ!
今夜は悔しさで眠れそうもなかった。
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