キライ
カノジョのふりかぁ…。
憂鬱だ…。

トボトボと力なく登校する私の肩に軽く手が置かれた。

ゆっくり首を巡らせると一気に目が覚めた気分になった。

「お、大迫…!」

何、気安く人の肩触ってんのよ!

私の怒りなんて全く意に介さず、ため息混じりに注意する。

「名前で呼べって言ったろ」

黙って俯く私は何だか泣きたくなっていたけど、こんな奴に涙を見せたくない一心でグッと我慢した。

無言で歩く私をそっと窺うような気配が感じられ大迫が口を開いた。

「そんな嫌そうにすんなよ…」

大迫の事だから落ち込む私に追い討ちをかけるように意地悪を言うものと思ってたけど、意外に気遣うような言葉をかけられて思わず顔を見上げた。

珍しく困惑したような表情で、いつもの偉そうな態度は感じられない。

「廉」

一言呟くと驚いた顔で私を見つめる。

「何、驚いてんのよ。あんたが名前呼べって言ったんでしょ」

ムスッと言った私に大迫は少し表情を和らげた。

ふーん…。
そんな顔も出来るんだ…。

いつも私に見せる顔と違った顔を見せられて、ほんの少しだけど気持ちが緩んだ。
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