キライ
「…怖…かった…よぉ…」

つい、洩れてしまった本音に涙が止まらない。

「ごめん……」

大迫がそう呟いて私をギュッと抱いてくれた腕の中で、気の弛んだ私は声を上げて泣いた。

その間、大迫はずっと私の頭を撫でたり背中をポンポン叩いたりとまるで子供をあやすように優しくしてくれた。






気持ちが落ち着いてくると、大迫にしがみついてる自分に気付いてどうしていいかわからない。

いきなり突き放す事も出来ず、かといってこのまま腕の中にいるのも……。

どうしよう……。

私の葛藤を見透かしたように大迫はそっと腕を解いた。

泣き腫らした顔を見せたくなくて俯いたままでいると、大迫らしくない弱い声が上から落ちてくる。

「ごめ…ん」 

思わず顔を上げた私の目に映った大迫の顔はいつもの意地悪っぽい様子が消え、その表情には私を本気で心配してくれているのが窺えて一瞬心臓が跳ねた。

何、ドキッっとしてんのよ!
これは大迫なんだよ!?

自分に言い聞かせても心臓の音がうるさい。

さっきから、何だかおかしいんだってば…!

大迫の目を気にしたり、鼓動が早くなったり。

私ってこんなに弱気じゃないでしょ!?
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