キライ
「お待たせ」

校門で待つ私に大迫の声。

軽く首を横に振り並んで歩きだした。

特に会話する事もなく黙々と歩く。

「香奈…」

首を傾げ大迫を見た。

そういえば大迫はずっと香奈と呼ぶ。
人前でも二人の時でも。

「いや…何でもない」

「どうしたの?大迫らしくないよ?」

私の言葉に戸惑うように唇に拳を当て考え込んでいたけど、ふいに私の手を握った。

驚き立ち止まった私を横目でチラっと見る大迫の耳がほんのり赤くなっている…?

そんな大迫に私も頬が熱くなってる…と思う。

今日は涙腺弛んでるのかな。

目が潤んできて視界がぼやける。

でもそれは大迫と手を繋いでるのが嫌だからじゃない。

大迫の手の温かさが私を内から包んでくれてるような気がしたから。
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