キライ
だから大迫の手を振り払う事もせず、手を引かれるままに俯いて歩いた。

「廉…」

私は二人でいる時に初めて自分から名前を呼んだ。

「何?」

「やっぱいい…」

「お前らしくないな」

大迫はさっきのお返しだと言わんばかりに同じ言葉を返す。

「あっ、あのさ…明日も練習見に行っても…いいか…な…」

妙に恥ずかしくなってだんだん語尾が小さくなった私の手をギュッと強く握り返した。

「おー。俺の雄姿をしっかり見とけ」

何それ?
私はつい吹き出してしまった。

「雄姿じゃなくて先輩に怒られてるとこを見に行くよ」

「可愛くねーの」

笑う私に大迫はため息混じりで答えた。

やっといつもの調子に戻ったけれど、その手はまだ繋がれたまま。

大迫はどうして私と手を繋いでいるんだろう?

今日の私をただ放っておけないと思ってるのかもしれない…。
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