キライ
「香奈!」

別れ際に呼び止められ大迫に視線を巡らす。

少し躊躇いがちな沈黙の後、大迫が口を開いた。

「もう少し…カノジョでいてくれるか…?」


そうだった…。
私はカノジョのふりをしてるだけ。

今日の事で十分借りは返せたと思うけど、それを口にする事は大迫のカノジョを辞めるという事。

私は……

まだ大迫のカノジョでいたかった。

「大迫がちゃんと好きな人といれるようになるまで付き合うよ」

じゃあねと手を振って踵を返した私の胸は自分が発した言葉で痛かった。

大迫の好きな人…か…。

あの子達を諦めさせるため、私に頼んでまで(思い切り命令口調だったけど)こんな事をする大迫の好きな人って誰なんだろ…?

今日の事であの子達はもう私に手を出す事はないと思う。

きっと本物のカノジョが出来ても大丈夫。

だから、私が大迫のカノジョでいられる期間はもうそんなに長くない。

その時が来たら私は笑って大迫とその好きな人を見る事が出来るだろうか…。
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