キライ
「香奈…」

そっと私の名前を呼ぶ。

私もそれに答えるように小さく呟いた。

「廉…」

再び唇が重なった。

ついばむように繰り返されるキスに頭がぼぉっとしてくる。

一気に気持ちが緩み足の力が抜けてガクっと私は崩れ落ちた。 

「香奈!?」

廉は慌てて私を支える。

「ごめ…っ。もう力入んない…」

自分で思ってた以上に緊張してたのが可笑しくて、小さく笑顔を作る私を廉が抱き上げた。

「ちょっ!ちょっと!」

「暴れんなよ。重いんだから落ちるぞ」

失礼なっ!

やっぱりいつもの廉だと、ぶぅっと頬を膨らませたけど、途中で落とされたらたまったもんじゃないと、おとなしく抱かれていた。

正面の壇上に降ろされて安堵のため息をつく。

「大事な香奈チャンを落としたりしねーよ」

カレシになっても意地悪ぶりは健在。

「睨んだって可愛いだけで怖くない」

今まで聞いた事ないようなセリフに頬が熱くなる。

あんなにキライだったのに、こんなに好きになるなんてね…。

だから、これからは意地悪だけじゃなく、私限定の甘い言葉も聞かせてね。
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