キライ
俺は足をプラプラさせながらまいったなーと内心ため息をついた。

「足…どうしたの?」

俺の足に視線を向ける香奈に苦笑いした。

「あー、ちょっと捻ったみたい」

香奈は先生の机の引き出しから鍵を取り出すと薬品棚から湿布とネット状の包帯を取り出した。

「鍵あったんだ」

俺の前に屈んで足首に湿布を張る香奈に呟くと悪戯が見つかった子供みたいに俺を見て笑った。

その笑顔に俺の心拍数が跳ね上がった。

何だ!?今の!?

「先生には内緒ね」

上目遣いで舌を出す香奈にギクシャクと頷くが頬が自然に熱くなる。

足の痛みが胸のドキドキと同調してるように波打つ。

湿布の上から香奈がネットを被せてるが気付かれるんじゃないかと妙に緊張した。

「はい、これでいいかな?」

立ち上がった香奈に俺は靴下を履きながらボソボソと礼を言った。

「あ…りがと…」

香奈は笑って首を振り机に戻った。

こんなにドキドキしたのは生まれて初めてで、笑顔一つで香奈に心を鷲掴みにされた俺はそれ以来香奈の姿を見ると追わずにいられなかった。


いわゆる一目惚れってやつだった……。
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