キライ
駅で待ち合わせして電車に乗る。

やっぱり海方面は混んでるなぁ。

他の男が香奈に触れないよう必要以上に腕の中に囲う俺を見上げる香奈の頬が少し赤く染まった。

「ちょっと…くっつき過ぎじゃない…?」

「いーの、いーの」

今日の香奈はいつも下ろしてる肩までの髪をアップにしてシュシュでまとめている。

白くて細いうなじに視線が行くとついつい不埒な事を考えてしまうのであらぬ方向を見る。

小柄な香奈は俺の腕にすっぽり収まって電車が揺れると俺の腕にしがみついた。

たまには電車もいいよなぁ…。

こんなに密着してても香奈は怒らないし。

「廉?顔がヘンだよ?」

だらしなく頬を弛ませて妄想してた俺を香奈は不審そうに見上げる。

「ヘンって何だよ?」

慌てて頬を引き締める俺。

「べーつーにー。ヘンな顔だったんだもん」

クスクスと小さく笑う香奈をギュッ!と抱きしめたい衝動にかられるが人前でもあるし我慢した。

そうこうしてるうちに目的地の駅に着き、俺は香奈の手を握って歩きだした。
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