ドライヴ~飴色の写真~
   〈3〉

「田中さん」

 休み時間の移動中に、ふと、可憐な声で名前を呼ばれたので振り返ると、そこには思ったとおり原田さんがいた。

「原田さん! …元気?」

 本来なら、元気かどうかは聞くべきじゃないかもしれない。
 しかし、思いがけず彼女の表情が明るかったので思わず聞いてしまっていた。

「うん、あれから特に変わったこともないし、もしかしたらストーカー、千夜李のストーカーやめちゃったのかも」

 けろっとして話す彼女に、私は慌てた。

「油断しちゃダメだよ。油断した頃が危険だからね」

「うん! でも田中さんや篠さんがすごいってことは千夜李、わかってるから」

 彼女の笑顔見ると、なぜだかアルプス地方の大草原を思い浮かべてしまう。

「田中さんも、ストーカーに狙われないように気をつけてね」

 ふいに言った彼女の一言にドキッとしつつ、私は平気だよーと笑ってみせた。
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