ドライヴ~飴色の写真~
 しかし、思ったよりも陽気なテンションの子だった。

 彼は待合室でもいつも一人でいたので、誰かと会話するのを見たことがなかったのだが、話すとこんな感じなのか。

「田中さん、ワタクシ、ハンドル操作や、ギアチェンジ、進路変更等はそつなく出来るのですが、踏み切りでの発進がちょいと苦手でございまして、そのアクセルとクラッチのタイミングをもう一度ご指導頂ければと思います。フキフキ」

 フキフキ、と実際に言いながら轟くんは取り出したハンケチーフでこめかみ辺りの汗を拭った。
 そしてついでに、眼鏡の汚れも流れで拭いた。


 こいつ、勝手に教習の導入始めやがった。


「…じゃあ、とりあえず交代してウォーミングアップの外周一周からはじめよっか~!」
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