ドライヴ~飴色の写真~
 その後、病院に行ったが幸い怪我は軽かった。

 どうやら、汽輪くんも意識はまだ戻っていないようだが、命には別状なかったらしい。



「本当に入院しなくてもいいんだな?」

 タクシーの中で、篠さんが聞いた。

「いいって言ってたじゃないですか、先生が。大丈夫ですよ。心配しないでくださいって」

 私は包帯グルグル巻きの頭で答えた。

「心配だ…」




 いつもの銀色の階段を音を立てて上り、いつものちゃちなドアを開ける。

 無事、篠敬太郎探偵事務所に帰ってこれたのだ。

 あの時は、さすがに無理なんじゃないかと思った。

 なんて。長い、長い一日だったのだろう。
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