ドライヴ~飴色の写真~
「えっ? じゃあ、それからずっと十雨くんをマークしてたんですか」
 
 私が、全く気にもとめていないことから、篠さんが十雨くんを疑っていたと知り、私は純粋に驚いた。


「主犯と盗撮犯との共犯かもしれないというのも、なんとなく気づいていた。
 犯人が一人だった場合、私服の写真が必要ないのなら、そもそも撮らないんじゃないかと思ったんだ。

 …また、なぎさんと違う方法で、真相に辿り着けたようだな。ただ、もっと早く対処出来ていれば…」


 篠さんの辛そうな顔は見たくない。
 私は、身を乗り出した。


「あの時、アパートの部屋の前で少しだけ音がした時、すぐに篠さんの顔が浮かんだんです。絶対篠さんが助けに来てくれたんだって。暗号解けるはずないのに、でも、篠さんだって信じてたから、思わず叫んで呼んじゃいました」

 篠さんが、こちらをじっと見つめている。


「篠さん、本当に本当にありがとうございました」


 篠さんの目尻が下がる。

「ところで…あの暗号はどうやって解くんだ?」

「まあ、仮免受かる頃にはきっとわかりますよ」

 受かるかどうかわかんないですけどねっ!と、私は明るく笑った。

 篠さんのまわりの空気が、また再びどんよりとした。
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