ドライヴ~飴色の写真~
   〈3〉

『あのかーねーおーなら』

「あ、まだその着うたなんですね」

 篠さんが、携帯にかかってきた電話に出た。

「ああ、公史か。ああ、ありがとう、大丈夫だ。それで…えっ? 本当なのか」

 話の途中で突然篠さんの表情が曇った。どうしたんだろう。

 電話を切った後で、どうやら私が不安そうな顔でもしていたんだろう。

 篠さんが優しく話し出した。


「なぎさん、大丈夫だ。何も全く心配いらない」

「絶対嘘でしょ。何を隠してるんですか」


「ところでなぎさん、ユキちゃんから、ワインは美味しかったかと聞かれたんだが」

「ぶっ!」

 私は吹き出した。

「おっ、おならか。安心したら色々と緩むからな、仕方ない」

「違いますよ、普通に考えたらわかるでしょ」


「もしかして、あの日、オレはなぎさんと一緒にワインを飲んだのか?」


 篠さんがまっすぐな目でこちらを見つめてきた。

「え、ど、どうだったかな~」

「オレは酒が弱くて…すぐ記憶をなくすんだ。でも、あの日は…すごく良い夢を見たんだ。それははっきり覚えてる」
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