ぶたさん3
 ねこさんは自分のことを話してはくれませんでした。 何かを聞いても全部はぐらかしてしまいます。 ぶたさんが信用できないとかじゃなくて、誰かにたよるのが苦手なだけだ、とねこさんは言いました。 たしかに、ぶたさんは今までねこさんの手伝いをしたことはありません。 ねこさんは、弱みを見せない立派なねこさんでした。

 そんなねこさんが今、少しでも悩むような何かを抱えているんだとしたら。 二軒目に入り、フラフラと酒ビンを持ちながらほほえむねこさんを見ながら尚、ぶたさんはずっと考えていました。 考えて、考えて。 気がつけば、目の前にいたはずのねこさんの姿が見えません。 おトイレにでも行ったのかな? おきっぱなしになっているカバンや上着を見て安心したぶたさんは、ぼんやりそんなことを考えていました。
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