ぶたさん3

　その時、叩きつけるようなベルの音が工場内に響きました。　注射をしていない方の男は、いぶかしげにその音の元のほうに歩いていきました。


　はいもしもし、こちら××工場ですが―


　白いエプロンの男が電話の応対をしている間も、もう一人の男は注射の手を休めません。　そこにもうひとつ、叩きつけるようなベルの音が工場内に響きました。　電話をしている男は、まだ何かを話しています。

　注射器を持った男はチッと舌打ちをして、いったんぶたさんから注射器を取り外し、けだるそうに音の元のほうに歩いていきました。


　はいもしもし、××工場ですが―


　その時、後から電話に出た白いエプロンの男は、先に電話していた男の顔から、ニヤニヤが消えていることに気づきました。