僕の唄君の声
(玲視線)
いつもの帰り道、ふと右に目線をやれば壱葉が眉間に若干、皺を寄せながら前の2人を見ていた。
釣られて見てみれば手を繋いで歩く、バカップ‥いや、親友たち。
壱葉がこの関係を伏せたがるのは分かる。
多分、普通の身体じゃなくなった自分が嫌だから、せめて環境くらいは普通で居たいと思うのだろう。
個人的な意見を言えば、確かにノーマルの身体かと聞かれれば否定はしない。だからといって、壱葉を拒絶しようとも思わない。
ピタ、と頬に手を当てればへらっと笑ってみせる壱葉にはとても魅せられるし、大事だと思える。
ほら、好きな曲を聞かせるだけで幸せそうに笑ってくれる。
「(女呼ぶの、止めるか。)」
「玲ー!明日って部活あるっけ?」
雰囲気ぶち壊しの奏輔の声にイラッとしつつ、明日は顧問が出張のため出来ないことを伝えた。
「よっしゃ、華己ちゃん!今日俺ん家泊まらない?」
「え、あ、うん?」
「あ!下着なら姉ちゃんの未使用のやつあるし、俺のスウェット貸すし!」
「‥え、いや、あの」
「ん?何何?」
「え、と」
「‥はあ、奏輔。ちょっと遠回りだけど、華己ん家寄ってって。」
急に喋った壱葉に驚きつつ、奏輔に目線をやればこちらを見ていた。
早く行きたいのは分かるがお前の肩は持てない。
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