僕の唄君の声



ヴー‥、ヷンッ

「あー‥、なあ。」

「んー?」

ヷンッ

「お前の家は、大型犬を飼ってる?」

「うん、飼ってる〜」

ヷン、ヷンヷンッ

「この前居なかったよな?」

「ああ、お婆ちゃんが洗ってたから。」



柳家に着いて早々に犬の話を持ち掛けられ、不思議に思っていれば、そうか、なんて言いながら犬を凝視する玲。

鎖がガチャガチャいう度にびくびくしている。



まさかとは思うが、


「犬怖い、とか?」

「いや、大型犬が苦手。」

「噛まれたとか?」

「いや、小せェときに張っ倒された。」

「そっか。この子はね、ジョンて言うの!私が3歳のときから一緒にいる子。」

「へえ、」

「ただいま〜、ジョン!」

「‥、」

「ふふ、玲こっち。」

「は、いやいや!」

「‥大丈夫。顎の下、撫でてあげて。顔覚えてくれるよ。」

「‥っ」



ゴクリ、と唾を飲む玲の左手を掴み、隣にしゃがませる。


「ジョン、シー‥ッ。そう、いい子。玲、」

「あ、あぁ‥」


恐る恐る手を伸ばし、大きな手でジョンの顎下を包みこんで撫でている玲の顔は、なんだか幼く見えた。


「上手上手。」

「はは、お前可愛いな。」

とか言いながら2人で色んなところを撫でてやる。



「‥よし、中行こっか。」


そう言いながら、ジョンの首輪からリードを外してあげる。


「え、取んの?」

「うん、家の中に連れて行くの。」

「ちゃんと飼育してんだな」

「強いて言うなら、一緒に育った感じ、かも」

「ははっ、そっか」



そう言いながらジョンを撫でようとする玲にジョンは静かに首を差し出していた。


ジョンって壱葉に似てる、と言われたが、飼い犬は飼い主に似る、とかいうやつだろうか。



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