僕の唄君の声
(玲視線)
「ただいま〜」
ガチャリ、と玄関を開け、ジョンの足をかけてあった濡タオルで拭きながら壱葉はベスー、カカオー、ウルー、と暗号みたいなことを大声で言っていた。
「おかえりー、夕飯出来てるよー」
「あ、どうしよ。」
ジョンを解放し、スリッパを出しながら話しかけられた。どうしよう、とは夕飯のことだろう。
食べてく?あ、でも玲ん家でもご飯の支度しちゃってるかな。んー‥、どうしよう。
と、ブツブツ独り言を言いながら、壱葉は俺を2階の自室へと促した。
「食べてくれば?待ってる、」
「でも、」
「いいから」
「んー‥、じゃあここで待ってて。本とかいっぱいあるから、うん。」
「あぁ」
肉じゃが〜、とか歌いながら階段を下がって行く壱葉の声を聞きながらベッドにボフン、と座った。(気持ちの切替が早ェと思ったのは、胸に仕舞っておこう。)
白をメインにされた部屋は壱葉らしかったが、意外にもあの某ネズミのキャラクターが所属する会社のものが多い。
部屋をグルリと見てから、部屋の持ち主が言っていた本たちを探す。(探すと言っても、天井くらいまであるデカい本棚は、すぐに見つかった。)
ファンタジー、ホラー、FBIとかそっち系のもの、色々あった。
「‥、ん?」
端からスー‥と目線を流せば、随分と古い背表紙の本に目がいった。スルリ、と抜き取って表紙を見れば、思っていた以上には古くなかったが新しいわけでもなさそうだった。
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