僕の唄君の声
3
お風呂からあがり、部屋に戻ろうと階段を上がれば、何故か私の部屋から出てきたお婆ちゃんとすれ違った。
「どしたの?」
「イイ男なのか確認してきたのよ」
「‥‥お婆ちゃん」
「冗談よ。にしてもイイ男ね」
「‥はあ」
「ほんと‥、いい人ね。」
「そ、だね」
冗談とともにポツリと落とされた言葉は、
分かりきったことであるけれど、分からないような、そんな言葉だった。
「貴女の全てを理解しようとしてたわ」
そう言って、お婆ちゃんは1階におりていった。
カチャ、
ドアを開けると突っ立ったままの、眉間に皺を寄せた玲が居た。
「‥れーい、」
「ん?」
辛そうな顔して笑わないでよ
理解しなくていいから、
玲の優しく笑う顔を見せてよ
ぎゅうと抱きしめられた私は、玲の背中をポンポン、と叩きながら誰に対してか分からない「大丈夫」をずっと言い続けた。
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