僕の唄君の声



「あ。」


玲が突発的なことを言ってから数分。

急に思い出した事柄に思わず声が出た。


「何。」

ムス、とした低い声が斜め下から発せられる。当然、声の持ち主は玲だ。



「玲の家、行かないの?」

「‥忘れてた。」


当の本人がこれではたまったもんじゃない。案を持ち込んだのは、確実にそっちなのに。


「今から出る、けど平気?」

「全然オッケー」

「‥しかしまあ、何というか」

「何よ」

「彼氏ん家行くのに緊張感ねェな」



そう言われて下に視線をずらしていけば、
Tシャツに厚手のパーカー、
ズボンは中学校ジャージ。

家でのお決まりの姿だ。



「まあ、気にしないで」

「どっちが彼氏か分かんねェな」

「玲でしょ、‥まさか女「なわけあるか!」ですよね〜。」

「とりあえず貴重品は持った。」

「早ェな。」

「携帯財布iPod、これだけ」

「お前男か」

「女じゃボケ。」



なんだかんだでドアを開けて待ってる玲は、意外にも紳士だと思う。



そのまま適当にあったサンダルを引っかけてゆるく行ってきますを言って、玄関を出た。

玲はいつの間にやら外に居た。


「よし、いざ出陣!」

「はいはい、行くぞ。」


なんだかんだ車道側を歩く玲は紳士なのだろう、きっと。



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