僕の唄君の声
紳士と思ったのもつかの間。
玲はなんとも言えない雰囲気を纏っていた。
コツコツ、
ズル、ズル
玲のローファーの固い音と
私の愛用サンダルのだらし無い音。
それだけしか住宅街には響いていなかった。
「(付き合いたてのカップルの空気なのかなこれ。)」
ふ、と疑問に思った。
玲はなんで私を好きなのか、とか
本気な彼女居たのかな、とかまあ、色々。
隣を見ればiPodの画面に照らされながら、曲を選んでいる様子の玲。
「くそ、かっこいい」
ぽつりと呟いた言葉は曲を聴いている玲には届かなかったようで、呑気に鼻歌なんか歌っていた。
「ばーかあーほ私だって普通に純情な恋がしたいんだけどーなんでアンタはそんな大人びてんだばーかばーか、ばー‥か」
聞こえないことをいいことにブツブツと隣で暴言を吐いていると、なんだかそれが無性に悔しくて悲しくて訳が分からなくて。
「ばああああか!」
「‥は?」
さすがに叫び声は聞こえたようで、ポッカーンて顔して玲はこっちを見た。
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