僕の唄君の声
2
そんなこんなを住宅街で繰り広げながら歩いてしばらくすると、急に玲が立ち止まった。
「ぶ‥っ」
そしてそれにうまく反応出来なかった。
「‥何やってんだよ」
「玲が急に立ち止まったから‥!」
「急も何も、家着いたんだからしょうがねェだろうが。」
止まるだろ普通、とか言いながら髪に指を通してこちらをチラと見て、近づいてきた。
(いい、いい色気が‥!)
「‥って近い!」
「‥キスしてェ」
「‥やだ無理、絶対いや」
「‥なあ、」
「いや」
「‥っ」
「(‥あ、)」
沈黙。
互いに目は合ってて、さっき玲が近付いてきたのを止めようと伸ばした手は、玲のセーターの腕部分をギュ、と握ったまま。
触れ合ってるのに冷たい。
玲の顔が苦しそうに痛そうに怒っているかのように、歪んだ。
_