僕の唄君の声


無意味に近い抵抗は呆気なく破られ、只今玄関前。


いやいやいや!いくら私でも焦るよこれ、いやむしろ焦りっていうか緊張?ああもうどうしよう緊張だ緊張!

「ってどうでもいいわ!」

「うお‥っ!何だよ急に!」

「え、いや、気合い入れようかと」

「ぶはっ」

「な、なんで笑うのよ!」

「いや、気合いってお前‥!」

「だ、だだだって、緊張してき、た」

「大丈夫大丈夫。」

「いや、でも、」

「大丈夫大丈夫、」

「‥!」


頭をポンポンと撫でられ、そろりと視線を向ければ、玲は優しく私に笑いかけていた。

しばらく頭を撫でられていると玲が静かに口を開いた。それと共に、頭の上にある重みが無くなった。


「よし、落ち着いたな」

「う、うん」

「まあ気楽にしてろ」

「‥うん」


ガチャ、
「ただいまー」




「‥、‥ぁ‥!」


玄関を開けて玲が帰宅を知らせる言葉を発すると、本当に小さく、声がした。男か女かそれすらも認識出来ないほどの小さな声。


その直後、軽快な足音が聞こえてきた。




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